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治療ではなく予防のために。 がん発症リスクを知るゲノム解析

ゲノム遺伝子を読み解いて特定のがんの発症リスクを判定する事業を行う株式会社ゲノムクリニック 曽根原代表取締役をインタービューしました。


 

曽根原社長は、

筑波大学附属駒場中高卒業後、筑波大学、東京大学大学院にて先端生命科学を専攻し、千葉大学医学部医学科(MD-PhD コース)を卒業。医師免許取得。2017年より個人ゲノム解析の医療実装化を目指すゲノムクリニックを千葉大学発研究プロジェクトとしてスタート。2018年4月に株式会社ゲノムクリニックを創業というご経歴です。

非常に、高い志をお持ちで、遺伝子解析にかける情熱とこれからの業界と、将来の展望をお聞きしました。お楽しみください。


 

1.どのようなきっかけで日本にいらっしゃいましたか?

元々は生命科学研究を筑波大と東大大学院で行い、その後、千葉大学医学部に編入学しました。一貫して遺伝子の研究をしていたので、いつか医療実装化したいとの思いがありました。さらに振り返ると、高校生の頃にヒトゲノム計画が完了し、そのころから遺伝子には興味があったのかもしれません。当時は1人あたりゲノム解読に10億円以上かかっていたコストが、今や10万円を切るようになってきました。このような状況になって、より多くの方々のお役に立ちたいと思い、会社を立ち上げました。


 

2.これまで、どのような経緯で、代表になられましたか?


千葉大医学部大学院で文部科学省リーディングプログラムという講義があり、起業を想定したシミュレーションを行いました。そこで、医師、薬剤師、研究者などがチームとなって次のヘルスケアビジネスを練りました。実は私の案はチーム内の選考では選ばれなかったのですが、たまたま聞いてくれていた先生が「本当にやりたいなら、つないであげるよ」と言ってくれて動き出しました。千葉市のインキュベーション関係の方におつなぎいただき、千葉市産業振興財団や千葉大学ベンチャービジネスラボラトリーなどからご支援をいただいて起業に至りました。特にご推薦いただき出場したアジア・アントレプレナーシップアワード2017で特別賞をいただけたことで弾みがついたと思います。その後も、九都県市きらりと光る産業技術賞なども受賞し、自治体の方々などともパイプラインを作ることができました。

 

3. 商品開発を行われた理由はございますか?


乳がんと卵巣がんで亡くなる方を減らしたいと思い、発症リスク判定から始めました。今の商品名はBRCA Seq(ブラカ・シーク)です。カウンセリング後に唾液を提出して頂き、そこからDNAを抽出し遺伝子を読むというシステムです。成人女性向けの検査になります。今、乳がんで年間約2万人の方が亡くなっています。そのうちの約10-15%を予測できると考えています。仮にすべて防ぐことが出来ると、年間数千人の方の命を救うことが出来ます。当社の強みは、遺伝子の意味付けと、早期発見につなげるカウンセリングサービスと考えています。実は検討の中で米国のミリアド社が特許を持っていることは知っていました。そして、特許が切れたタイミングで始めようと考えました。日本では多分、1~2番に始めたと思います。現在、週に2~3日は婦人科の外来で乳がん・卵巣がんの検診や不妊治療の仕事を行っています。残りの4~5日をベンチャーの業務に使っています。ラボを千葉県柏の葉に開設し、そちらで解析をしています。


 

4. 主な商品内容・開発・販売の仕組みを説明していただけますか?


遺伝子解析の技術面での上流から、実際に患者さんに役立てる下流まで理解していることが当社の強みです。イメージしづらいかと思いますので、似ている既存の医療サービスを挙げるならCT・MRIの読影サービスの仕組みが挙げられます。装置さえあれば誰でも、患者さんのCTスキャンを撮って、見ることは可能です。ですが、当然それでは役に立ちません。重要なことは、それを読影して、意味付けし、患者さんに説明が出来るようにすることです。ブラカ・シークは現在の法律上では医療行為ではないという判定ではありますが、医療レベルでの正確な意味付けを提供します。逆に縛りがない分、唾液を郵送で送ってもらったりすることも可能です。1回の検査料金は、39,500円(税抜)となっています。今後、より低価格にしたいと考えています。また、遺伝子は22,000個ありますので、まずは2個の遺伝子から診ていきますが順次増やしていく予定です。

 

5. これまでは、どのように資金調達を行っていらっしゃいましたか?

今までは全て自己資金と補助金で行ってきました。ゼロをイチにできた段階です。今後は資金調達も考えており、イチを百にする段階での調達を検討しています。

今回のサービスは正直練りに練って始めました。約1年の準備期間を設けました。出来ればすべて自社でやりたかったので、2016年頃からいかに安く設備を準備できるかについてや、プログラミングの勉強も始めました。結果としてすべて自社で行うことができるようになり、低価格化を実現できました。よく宣伝されている消費者むけ遺伝子検査の1000倍正確なことが言えるとご説明しています。また、遺伝関連学会などでの発表も行っており専門家との連携を密にしています。補助金については、千葉大のベンチャー支援補助金、自治体・経産省の補助金、アジアアントレプレナーアワードでは日本企業で2017年に唯一受賞しました。いくつかの一般誌にも掲載していただいています。ベンチャーキャピタルは多くお声掛けいただいていますが、現状では入っていない段階です。

共同創業者の麻生は実際、シリアルアントレプレナーですのでそのあたりは任せています。

いずれは、海外、とくにアジアマーケットを見据えています。


その時は、人員、設備も大型にすると思うので、いずれベンチャーキャピタルにお願いするタイミングも出てくると思います。

 

6. 今後はどのように展開していく予定ですか?


マーケティングとしては、BtoC、BtoBの両方を考えています。

予防医療の範囲になりますので、企業や、その他の健診などに使って頂くことを考えています。多少、時間はかかると思います。日本は個人に関しては欧米と違って発症前に病気を見つけようという意識が低いと思いますので、企業・自治体向けのプロモーションには注力しています。千葉市、柏市なども地元の企業に声がけしてくれています。

そうはいっても、今は会社を伸ばすことよりも、遺伝子を読むことに力を入れています。

米国では町ごと全員遺伝子の解析を行っている地域も出てきています。ペンシルバニアでは、まずは遺伝子を読んでから病気を考えるということを行っています。エストニアは国民全員の遺伝子を読むと言っています。今後22,000個の遺伝子をそれぞれが知ることは当然の時代になっていくと思います。将来的には、新生児が生まれた瞬間に遺伝子を読むという形が実現するはずです。実は日本ではほぼ全員が受けている新生児マススクリーニングも遺伝子解析の一種と言えるので、それほど目新しい考えではないかもしれません。

 

7. 今後の目指す方向性、将来像をお知らせ頂けますか?


今後は一歩進んで、Actionable Variantと言って対応ができる遺伝子の意味付けをどうやってするかが重要になります。他に先行して、遺伝子情報を持つことが重要な時代が来ると思います。遺伝子データは一生変わらないものです。ということは2回読む必要が無いのです。最初に読んだところが強いということです。そうすると、最初にその人の遺伝子を読んだ会社は一生メインバンクになるということです。データ自体が参入障壁になるので特許は必要なくなるのです。いかに、しっかりと預かって、意味付けして、解析が正しいかが最も重要になります。人生のターニングポイントでお伝えしていくことが大切です。例えば、生まれた瞬間です。先天的な病気の判定。成長時の若くしてなる病気の調査、そして、結婚ですね。結婚のタイミングでお互いのパートナーと遺伝子の相性ですね。キャリアスクリーニングという考えは広まってきています。国内でも話題になっていることに、出生前診断ですね。あとは、癌ですか。最後に死ぬ前には、デジタル遺産として後世に残すことが出来ます。1度読んでおくと人生のイベント毎に役に立てられるということです。

 

8. 目標としては何を見ていますか?


5年後には、日本人全員の遺伝子を読みたいと思っています。10年後にはアジア全体の遺伝子を読みたいです。これは決して突飛な話ではないです。一昔前は、遺伝子解析は時間がかかりました。今は、マシンパワーも上がったので、かなりの速度で読むことが出来ます。普通のノートPCですらかなり行けます。

また、今後は認知度を上げたいですね。まずは自治体の健診などに取り入れてもらうことが一番の近道だと思います。一般的な検診項目の中に入ることが当面の目標です。

 

9. 将来の夢はいかがですか?


癌で亡くなる人を減らしたいということです。癌の発症者は年間約100万人です。厚生労働省のデータからもステージ1であれば、がん種にもよりますが90%以上完治します。症状が出てからでは遅いということです。狙って見つけに行かないと見つけられないのが癌という病気です。待っていては遅すぎるということです。早期発見・早期治療が出来る世の中を作りたいと思っています。確かに、癌の種類にもよります。すい臓がんなどは早く見つけても治らないことは多いです。また、前立腺がんはステージが進んでいてもほぼ治ります。こうした種類の違いにも注目して研究を進めたいです。


今後も医師として、患者さんとの接点は持ち続けます。同時に会社経営もやっていきます。どうしても現場にいないと、真のニーズとずれてしまって、そういったヘルスケアビジネスはたくさん見ています。社会に求められていないことを一生懸命するよりは、求められることに照準を合わせていきたいと思っています。

 

会社名 株式会社ゲノムクリニック (英語名:Genome Clinic Co.,Ltd.)

本社所在地

〒260-0013 千葉県千葉市中央区中央2丁目5番1号ゲノムセンター(Dry Lab)

〒277-8520 千葉県柏市 若柴178 番地4 柏の葉キャンパス148街区2 31VENTURES KOIL 内

ゲノムクリニックラボ(Wet Lab)

〒277-0882 千葉県柏市柏の葉5丁目4−6 東葛テクノプラザ 内

設立日 2018年4月24日

資本金 300万円(2018年4月24日現在)

役員

代表取締役 共同経営責任者(医療・テクノロジー管掌) 曽根原 弘樹

代表取締役 共同経営責任者(経営・ファイナンス管掌) 麻生 要一

共同研究者

・西村基(臨床遺伝専門医 千葉大学医学部附属病院検査部・遺伝子診療部 日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会所属)

・千葉大バイオインフォマティクス研究会(代表:千葉大学医学部 坪坂歩)

 





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