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日常に溶け込んだ健康管理・生涯健康を実現するIoT尿検査装置を開発し人々の健康を守る

更新日:2019年10月14日



 

メディカルベンチャーネットでは、BISUの代表である外国人社長、ダニエル・マグス氏にインタービューしました。ダニエル・マグス氏は、英国生まれのイギリス人です。ケンブリッジ大学を卒業して、弁護士となり、投資銀行にも勤務していた方です。

日本語を勉強したことがきっかけで、日本に住み、日本で起業しました。弁護士という経歴からベンチャーを立ち上げた経緯をお聞きしました。多くの投資家、起業家の方に参考になる部分が多くある内容です。インタービュー内容をお楽しみください。

 

1.どのようなきっかけで日本にいらっしゃいましたか?


元々は、英国の弁護士でした。弁護士資格を取ってから、英国の投資銀行に勤務していました。大学時代に既に、日本語を勉強したい気持ちがあったので日本語を専攻しました。そのあとに日本に来ることになりました。大学時代は一年間日本へ留学もしました。


何度かの滞在の後に、2013年の9月に日本へ引っ越しました。そして、DeNAに入社しました。私はどちらかというとハードウエアに関心がありました。DeNAは原則、ソフトウエアしか取り扱わないので、その時は、ソフトウエアの部門に勤務していました。

 

2.商品開発のきっかけは何でしょうか?


同じころに、実父が、前立腺癌にかかりました。頻尿になって困っていました。そこをきっかけに、尿検査で何とか病気の早期発見が出来ないかと考えていました。

そこで、医師や、患者さんと話して考えたのは、早期発見も大切だが、生活習慣の改善がもっと大切だと感じるようになりました。

これまでの、尿検査では、定性的なデータで異常を発見するものでした。その時点での異常はわかっても、次の日の状態はわからないものでした。


弊社のデバイスでは、カリウムやリウムなど、従来の尿試験紙では測定できない検査項目も測定ができ、比重、尿pHやケトン体などの従来の項目でも、より精度が上がった検査になります。その訳は、尿検査をマイクロ流体チップという媒体において行うためです。尿試験紙では使えない測定方法が使えるようになり、フィルムや乾燥した液体試薬など、尿試験紙では使えないものが使えるようになります。この技術は、共同創業者のブーラが独自開発したもので、以前は東大の専門研究室でマイクロ流体チップの研究開発をしておりました。


当初は液体試薬だけでした。それだと、冷やさないといけないなど条件がありました。

また、マイクロ流体チップを洗浄しないといけないので、必然的に劣化していくという欠点がありました。使い捨てのマイクロ流体チップを開発することで、このハードルを乗り越えることができました。


測定方法は、検査スティックの先端に付いている吸収パッドに尿を付けて、本体に差し込むだけで、洗浄も要りません。結果は2分後に出ます。ユーザは毎日その変化をデータとしてみることが出来、そのデータに応じて、自分のゴールやダイエット志向に合ったアドバイスがもらえます。

弊社の商品の特徴は、(1)マイクロ流体チップを使うことで、低コストで正確な結果を実現したこと、(2)従来の尿試験紙では測定できない項目を測定可能にしたこと、(3)医療機器に見えない新しいデザインにより、尿検査を日常生活に溶け込めるようにしたことと、(4)機械学習などを使うことにより、数値だけでなく、それに基づいた行動推薦の提供を可能にしたことです。


 

3.会社の設立はいつ頃ですか?

2015年4月に立ち上げました。最初は3人でした。最初の1年はリサーチや、方向性を決めることに時間を使っていました。

2017年に、HAXというサンフランシスコと中国の深圳市にあるハードウエア専門のアクセルレータープログラムに参加しました。SOSVが運営しているファンドです。ハードウエアに最も活発です。2017年にプレシードラウンドがありました。2018年2月と2019年同月にエンジェルラウンドを調達しました。


現在は最終プロトタイプの量産に向けた準備と、エンドユーザとのプライベートβテストを進めています。最近特許申請も提出しています。これまでいくつかのバージョンがありましたが、今回のバージョンは、 エンドユーザーが簡単に使えるようになっており、低コストで量産できるものになっています。


 

4.FDAについてはいかがですか?


今は必要としていません。今見ているマーケットは、スポーツとダイエット市場です。2021までにFDAを通過し、糖尿病や腎臓機能障害の患者さんの予防・治療のためのツールとして提供したいと思います。


但し、まずは、収益も必要です。そのためには、スポーツとダイエット市場に参入し、資金を準備し、データを蓄積しながら、FDAとメディカルマーケットに備えていくつもりです。


市場としては優先しているのは米国の市場ですが、日本にも大きな可能性があると感じており、特にソニーのスマートホーム事業部及びヘルスケア事業部の方と関係を作っており、来年はパイロットモデルなど何かのコラボレーションができればと願っています。

 

5.資金調達はこれまでどのように行われましたか?


今まで累計9000万円を調達しており、今回のラウンドは残り3000万円調達しているところです。その資金で2020年3〜4月にプロダクトローンチを行い、3億円以上のラウンドを調達して量産に進みます。また、エンジニアの採用も増やす予定です。インターンは2~3名います。


今までの資金調達の際には、転換社債での調達を行ってきました。

ここまでやってみて思いますが、ハードウエアに対しては、投資家はかなり慎重です。もちろん、ハードウェアベンチャーはソフトウェアより時間とお金がかかり、失敗事例が多いです。

今は、アクセルレータープログラムには入っていません。


 

6.本社はどちらに置いていますか?


本社は東京です。サンフランシスコは、セールス&マーケティングの為に置いています。日本は商品開発の拠点としています。月に1度は、米国に出張しています。米アトランタはソフトウェアの開発拠点です。9月はイギリスで、そのあとヘルシンキでの、ヘルスケア関係のイベントで登壇し発表する予定です。

 

7.プロモーションはどうされる予定ですか?


今年の4月までは、古い商品がありました。その時はどのような商品なのかは、わかりずらかったと思います。リブランディングとデザインに時間をかけ、現在はビデオコンテンツ、ポッドキャストやインフルエンサーマーケティングなどで積極的に集客しています。


 

8.日本で起業、ビジネスをする理由は?


先ず、人材の質とコストのバランスは日本が非常に優れていると思います。21世紀にもっとも大きな市場になるアジアに参入する安定した拠点としても良いと思います。また、サンフランシスコはいろいろな部品の調達に時間とコストがかかります。また、人材も、家賃も高価です。また、中国の深セン市は今はハードウエアのシリコンバレーのようになっていて、ハードウエアでは最も進んでいます。しかし、情報漏洩も言われています。ですから重要なチップの製造は日本で行います。

質と信頼性は日本製が一番です。メイドインジャパンブランドで行う予定です。


 

9.商品の金額は、いくらの予定ですか?


本体は10,000円~15,000円、検査スティックは月2,000〜3,000円以上(利用頻度や検査項目の数による)の予定です。

 

10.商品の特徴、差別化としてはいかがでしょうか?


もちろん、尿検査系サービスは既にいつくか存在しています。大きく分けて二つタイプがあります。一つ目は、従来の尿試験紙をスマホで測定できるものです。これはある意味便利ですが、尿の採取方法は変わらず、最初にコップに排尿する必要があります。また、古い技術を利用するため新しい検査項目を提供することができず、尿試験紙の表面層から反射してくる光を測定するため、訂正的なデータしか測定できず、精度に限界があります。もう一つ目は、トイレに尿検査センサーを設置しようとするベンチャーや、尿検査を自動で行うトイレを作ろうとしている会社です。たとえば日本にSYMAXというベンチャーがありますが、尿量と尿pHしか測定できておらず、尿を便座に入った後の希釈化されたしまった状態で検査するため、精度があまり良くないようです。これは「トイレに設置しないといけない」ことを前提としたことは、大きな間違いだと思います。対象者は重大な病気の患者さんや被介護者だったら分かりますが、そうじゃない人はだいたい会社、出張、旅行やジムなど様々な場所を回っているので、一つの固定した場所でしか使えない場合は逆に不便です。尿検査トイレもそういう意味では同じですし、高価なものなので拡散しにくいと思います。お客様が自分の生活を商品に合わせるのではなく、商品をお客様の生活に合わせるのです。

 

11.米国のNASA、海軍ともコンタクトされているようですね?

はい、米国では、NASA、米国海軍ともコンタクトをしています。NASAは特に関心を持っています。なぜなら、宇宙で尿検査を行うのは非常にややこしく、弊社のデバイスなら簡単にサンプルを採取できるので、楽になります。デモを見たいという話を頂いており、準備を進めています。

米国海軍とは直接連絡取っていませんが、弊社アドバイザーのダゴスチーノ博士は海軍と尿検査を含む共同研究を行っているため、そのためにも弊社デバイスを提供する予定です。


 

12.共同創業者のブーアCTOにどうやって会いましたか?

リンクトインです。自分で当初はつてもなかったのですが、ブーアが考えていた分野の研究を東大で行っていました。そこで、メールしてランチして話しました。いくつかの共同のプロジェクトの後に、正式に共同経営を始めました。彼はポーランドの出身です。機械系エンジニアはデンマーク人、WEBエンジニアはアメリカ人、デザイナーは日本人です。

 

13.どうしてこの尿検査のアイデアになりましたか?


当時はトイレに何かを設置できないかと考えていました。そして糖尿病を早期発見する方法はないかと探していました。しかし、その後患者さんや医者さんと話している中で気付いたのは、慢性疾患で大切なのは早期に発見することではなく、早期に生活習慣を変えるように支援する、ということです。ここで重要なことは弊社の尿検査は、検査によって数値を確認していくことではなく、生活習慣の改善していくことが最終目標になるのです。また、それに対して適切なアドバイスを提供していくことも大切です。そのためには新しいデータとユーザ体験が必要になってくるので、従来の尿試験紙ではこういうサービスは提供できません。


血液検査も大切ですが、尿検査も重要です。2つの検査をすることでより正確なデータを取ることが出来るはずです。

 

14.今後、5~10年のビジョンをお聞かせください。


2020年は、まずはスポーツチーム及びダイエットの分野でプロモーションしていく予定です。日本で販売する場合はRIZAPのような会社とコラボしたいと思います。そういうダイエットプログラムは短期で収益化できますが、その後の持続率が非常に低いので、弊社の尿検査に付加価値を提供できるところがあるのではと思います。


2021年からはFDA審査を必要とする検査スティック(特に妊娠、排卵期及び感染病)を提供し、ダイエットに関する検査スティックを糖尿病及び腎臓機能障害の患者への提供を開始したいと思っています。


また、最優先ではありませんが、二つの新商品の開発も 進めております。現在の商品の検査スティックを盛り込んだスマートおむつと、尿検査を半自動で行うウォッシュレットです。後者は紙からできたマイクロ流体チップを利用しており、検査後トイレに流されてすぐに分解するため、非常に環境にやさしいです。

 

15.IPOについてはいかがですか?


IPOについては考えていません。日本でIPOが多かった理由は、1番は、プライベートマーケットでは金額が少なすぎるということ。2番目は、日本の大企業はこれまでは買収はあまり好きではなかったということです。できれば社内でやりたいというのが多かったです。また、スタートアップを買収したとしても、大変低い金額でした。私から見ると、IPOは会社の売却ではなく、お金を集めただけだと思います。また、多くのレポーティングに忙殺されます。ですから、個人企業のままか、完全に売却するかのどちらかになると思います。

公開企業になるというのは大変な負担があります。確かに、会社と自分の事業に愛着はありますが、株主の為に、これからの20年以上を縛られるのは大変なことです。


また、公開企業では短期的な成果を求められます。それなら、個人企業で、長期のビジネスを考えていきます。ただ、買収される前提でビジネスは行っているわけではないです。しかしながら、5年くらいを見てEXITを考えています。

VCさんと話すときもいつも5年くらいを見て、理解をもらって出資して頂いています。


社名(英文社名):Bisu, Inc.

代表者:Daniel Maggs

事業内容:ヘルスケアIoT商品の開発

資本金:100USD

設立年月日:2016年6月6日

内容: 日常に溶け込んだ健康管理・生涯健康を実現するIoT尿検査装置

日本人の死亡者数の約6割を占める「生活習慣病」の増加という大きな社会課題に対し挑戦する、ダニエル氏のビジョンによって事業化。著名なベンチャーキャピタルからの出資を受ける。


・創業者 Daniel Maggs(ダニエル・マグス) プロフィール

ロンドン生まれ、東京在住のイギリス人。ケンブリッジ大学で日本語を専攻した後法科大学院に進み、法律事務所に入社。英国法弁護士資格取得後投資銀行でアナリストを勤め、3社目は日本のディー・エヌ・エーで新規事業企画を担当。そのうちヘルスケアIoTという領域に目がつき、ハードウェア・ベンチャーの立ち上げを決意して退社。自分の父親が前立腺癌になったことからもインスピレーションを受け、次世代尿検査サービスの開発に挑戦している。

 





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