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日本初の"アトピー見える化アプリ” 元アトピーのパパが開発した無料iPhoneアプリ「アトピヨ」

更新日:2019年11月8日


アトピー性皮膚炎に悩む患者さん同士が

匿名で情報を共有できるアプリを開発し運営を行うアトピヨのAKO代表にインタービューを行いました。

アトピヨは、文字だけでなく「画像」を投稿することで、アトピー特有の皮膚症状(状態)を匿名で記録・共有できる

日本初のアプリです(2018年7月アトピヨ調べ。App Store・Google Playを調査)。

画像は身体の部位ごとに時系列表示され、

(1)症状記録の見える化、

(2)悩みや症状の共有ができます。

アトピーを発症し悩んでいる方々の早期回復のサポートになることを目指しています。

アトピヨは、2019年10月現在(リリース後1年3ヶ月)では9,000ダウンロードを達成し、2018年12月の慶應医学部主催「第3回健康医療ベンチャー大賞」3位入賞をはじめ、多くの賞を受賞するなど、その注目度も急速に高まっています。

AKO代表のこれまでの経緯、そして将来についてのお話を伺いました。



 

1. アトピヨの始まりはどのようなことからでしょうか?

私自身、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎という3つのアレルギー疾患の経験があり、つらい思いをしてきました。そして、4年前にアレルギーが原因で、旅行中に救急車で運ばれたことがありました。今までは、漠然とアレルギー疾患は病気だから医療が解決する問題だと思っていたのですが、医療以外の部分でも何かサポートできるものを作りたいと考えるようになりました。それが、今回アトピー専用アプリ、アトピヨを自分で開発したきっかけです。

アレルギー疾患の中でも、特に私の中で問題意識が高かったのが、アトピーでした。3つ理由があるのですが、1点目に24時間痒みが続くということが挙げられます。睡眠時間も削られていきますし、仕事、学校にもいけない方もいらっしゃいます。2点目に、アトピーは見た目に出てくる辛さから、精神的に追い込まれてしまうことも多々あります。3点目にアレルギーの一番起点にアトピーがある可能性があるので、それを止めたいという思いがあります。治療は医療がしますが、それ以外の部分で、アプリやWEBでアトピーをサポートできないかと考えたのが始まりです。

3点目を補足しますと、私自身、幼少期にアトピーを発症し、並行して喘息になり、アトピーと喘息は良くなったものも、今度は10歳前後からアレルギー性鼻炎を発症しました。

私の例に限らず、一般的にアレルギー疾患は連鎖することが多いと言われています。成長と共に、アトピーから食物アレルギー、食物アレルギーから喘息、喘息から鼻炎といった具合です。このように、成長するにつれて、次々とアレルギー疾患を発症していくことをアレルギーマーチと呼んだりします。今は、日本人の約半分、2人に1人は、何らかのアレルギーを持っていると言われており、一番多いのは、花粉症だったりします。

最近アトピーや肌荒れから食物アレルギーに連鎖するということが分かってきました。もしかすると、アトピーや肌荒れを早期に治療できたなら、その後の食物アレルギー、喘息、アレルギー性鼻炎といったアレルギー疾患の発症を防ぐことができるかもしれません。

従って、アトピーや肌荒れを幼少期に治療しておくことが大切です。体の仕組みとしては、食べ物を口から入ると、「食べ物」と認識しますが(経口免疫寛容)、肌が荒れていて、皮膚から入ると「異物」と認識してしまうようです(経皮感作)。このアトピーや肌荒れが、アレルギーの起点になっている可能性が高いようなのです。

 

2. AKO代表の学生時代やお仕事などバックグラウンドを教えてください 。

大学は上智大学の理工学部機械工学科に入りました。これは、元々機械や車が好きで、ホンダのF1のエンジンのようなものを自分で作りたいと思ったからです。しかし、実際に入ってエンジンを分解して油まみれになったりと泥臭い作業を経験する中で、機械を管理する側の管理工学の方へと少しずつ転換していきました。

実際に大学院では、慶應義塾大学大学院の理工学研究科で管理工学を選択しました。管理工学では、プログラムを組んで、サプライチェーンなどの研究をして、経営学に近い部分がありました。大学院の研究室の先輩や同級生に、公認会計士になった人もいて、会計士の仕事の幅の広さに魅せられ、大学院を卒業してから、勉強を開始して公認会計士になりました。会計士としては回り道をしている方だと思います。

27歳で会計士になって、8年間監査法人に勤務しました。監査法人では、国内監査事業部に勤務し、地域密着型の小さい会社から、一部上場企業まで様々な企業を担当しました。ただ、監査する側は固まった数字を確認することが仕事になりますが、数字を作りだす側にいきたいと考えて、ベンチャー企業に4年前に転職しました。今は会計士として、その会社で管理部門を担当しています。アトピヨはボランティアとして自ら企画し、週末に開発・運営を行っています。

 

3. ”アトピー見える化“というアトピヨのアイディアを思い付いたきっかけとアプリの開発過程を教えてください。また、慶応医学部主催の「第3回健康医療ベンチャー大賞」で受賞されていますが、応募の経緯なども教えてください。

幸いにも私のアトピーは幼少期だけでしたので、アトピーで今悩んでいる方に話を聞きにいきました。2017年9月にアトピーを持っている方数名と飲みにいく機会がありました。アトピーが本当にひどい時は、なかなか外出できなかったりしますので、昔はひどかったけど、今はかなり良くなっている方たちです。

一人の方が7年くらいアトピーの闘病ブログを書いていました。その中では、写真が時系列に並べられ、アトピーが良くなったり悪くなったりという症状経過が一目で分かるようになっていました。そのブログはとても人気があるのですが、アトピーという皮膚の病気の場合には、写真が大切だということに気付かされました。また、その方たちは、普段吐き出せない思いをツイッターでつぶやいていて、匿名性のツイッターを通じてアトピーの方同士で強く繋がっていました。それを聞いて、ツイッターのつぶやき機能と、画像のあるものを合体させたら、アトピーの方にいいものが作れるのではないかと思いました。

もちろんインスタグラムもあるのですが、どちらかというと、キラキラした投稿が多く、アトピーのイメージには合わないということが分かりました。そこで、アトピーだけに特化した、匿名の画像SNSが作れないかと考えたのが、アトピヨのアイディアを思い付いたきっかけです。

ユーザーからの直接ヒアリングと並行して、ツイッターなどを通じて、100名以上のアトピーの方に、アトピー克服の課題を匿名でアンケート調査したところ、①症状管理が出来ない、②アトピーを相談出来る友達がいない、という2つの大きな課題があることに気づきました。アトピーに特化した匿名の画像SNSであれば、①画像による症状管理、②SNSによるユーザー間サポート、という2つの特徴によって、これらの課題を解決できると考え、アプリ開発に着手しました。

学生時代にプログラミングをしたことがあったのですが、いきなり自分でアプリを開発することは難しいと考え、プログラマーを探しはじめました。結局プログラマー自体がかなり不足しているという現実に直面し、探すのを諦め、TechAcademyというオンラインプログラミングスクールで勉強して、自分で開発することにしました。

2017年12月にプログラミングの勉強を開始し、6ヶ月でアプリを完成させ、1ヶ月はプレスリリースの準備をして、2018年7月にアトピヨをリリースすることが出来ました。アプリは外注すると数百万円以上かかるのですが、幸い自作できたお陰で、プログラミングスクールの5ヶ月間の受講料30万円程度ですみました。ユーザーのフィードバックを受けて、すぐに自分でアプリの改善や変更ができるのも、自作して良かった点です。

リリースして2ヶ月後の2018年9月に慶応医学部主催の「第3回健康医療ベンチャー大賞」に応募しました。そもそも、医療分野が専門でない私が開発したこのアプリは、医療関係者の目にどのように映るのかという点に関心があったからです。結果として、応募総数104組の中で、3位入賞(社会人部門)と協賛プラメド賞を獲得することができ、医療関係者やヘルスケアビジネスの専門家の中でも高く評価していただきました。アトピーは皮膚の病気であることから、将来的に医療や製薬との連携が必須と考えていた中で、このような賞を受賞できたことはとても嬉しかったです。

 

4. アトピヨのユーザー数など現在の状況を説明していただけますか?

今アトピヨをリリースして1年と少しで、9000人のユーザーがいます。プレスリリースがきっかけで、読売新聞、毎日新聞、産経新聞、時事通信などの取材を受け、紙面と同時にネットでも配信もしていただき、多くの方に知っていただけました。


ただ、ユーザー集めはすごく難しいと日々感じています。病気のアプリについては、口コミが起きにくいからです。他の人にアトピーという病気の話をすることはほとんどないですし、友人同士でお互いがアトピーを持っていたとしても、その話題にはならないでしょう。それはお互いの深刻度が違う、つまり、病気だからしょうがないと思っている方もいれば、死にたいと思うぐらいに深刻に悩んでいる方もいるからです。お互いがカミングアウトしない限りアトピーの話にはならないのです。ですから、原則、口コミでの広がりは期待できません。そこがアトピーという病気のアプリの難しい部分だと思っています。

 

5. アプリとして追加していきたい機能などはありますか?

直近では2つの機能追加を予定しています。

1点目は、かゆみの記録機能です。画像での経過記録は、アトピーの症状管理に有効と考えていますが、アトピーの主要な症状の1つである「かゆみ」については、画像での記録が困難です。そこで、症状画像と一緒に、かゆみの程度を5段階で簡易記録できる機能を考えています。

2点目は、画像データに含まれる文字の文字認識(OCR)機能です。お薬手帳などの写真を撮る方がいらっしゃいまして、お薬の情報を文字認識する機能があると、検索などに活用できます。

 

6. 医療や製薬との連携については、どのようにお考えでしょうか?

アトピーは皮膚の病気ですから、将来的には、医療機関と製薬会社とも是非連携していきたいです。

まず、医療機関側ですが、アトピーの患者さんが、例えば、月に1回皮膚科に通院するとします。この場合、通院当日の症状は分かりますが、通院までの1ヶ月間の症状変化は、皮膚科医が見ても分からないということがあります。また、当日診察室で見せにくい部位もあります。ですから、症状経過と見せにくい部位をアトピヨで見せることが出来れば、診療の役に立つのではと考えています。

実際に、医療調査会社プラメドの協賛のもと、全国の皮膚科医202名に調査を実施したところ、55%(111名)の皮膚科医から、アトピヨは診療のサポートに役立つと評価いただきました。具体的には、経過が把握できる、治療継続のモチベーションになる、短い診療時間でも効果的に伝えることが出来るという点が評価されていました(2019年6月27日PRTIMESよりプレスリリース)。

次に、製薬会社側ですが、治験のサポートを考えています。アトピーはステロイド治療が基本となりますが、ステロイドが効きにくい重症患者向けの効果的な大型新薬が2018年に発売されました。今後もアトピーは新薬の発売が予定されていますので、アトピヨ内で治験者を募集したり、治験の経過観察に、アトピヨの部位ごとの画像記録を利用していただくといった協力の仕方が考えられます。

また、アトピヨ内には、既にアトピーの患者さんの時系列の画像データが9000枚あります。現在、メラノーマという皮膚ガンの診断については、AIで皮膚科医と同程度以上の診断精度が出せることが確認されています。そこで、この9000枚の画像データを利用することで、何かしらの画像診断に役立てることが出来るのではないかと思っています。もちろん、その際には皮膚科医やAI分野の専門家の協力が必要になってくると思います。

今後のアトピヨの展開については、医療機関、製薬会社との提携に加えて、AIの活用の3つが大きな柱になります。

 

7. アトピヨは日本向けのiPhoneアプリと伺っていますが、Androidでの展開や海外展開といったお考えもあるのでしょうか?

アトピヨは、現段階ではiPhone専用アプリとして日本語でリリースしており、AndroidとWEBには対応できておりません。そのため、ユーザーも限られてしまっています。少し時間はかかるかもしれないですが、Androidをお使いの方にも使ってもらえるようにし、PCやスマホのブラウザでも使えるようにすることで、ユーザーが増え、ユーザー全員の利便性がさらに高まると考えています。

また、日本国内のアトピー性皮膚炎の患者は、600万人(人口の約5%、子供に限ると10%超)と推計されています。アトピーは日本だけでなく、世界中で多くの人が悩んでいる病気です。例えば、米国は2700万人(人口の約8%、子供に限ると13%)と、日本より多くなっています。仮に世界のアトピー人口を5%と仮定すると、3~4億人と計算されます。英語や中国語など多言語化を進めることで、より多くの人に使ってもらえると考えています。

 

8. 今後会社化や資金調達の予定はありますか?

アトピヨは、ボランティアとして活動しており、会社化や資金調達の予定はないのですが、先ほど申し上げた医療と製薬との連携、AIの導入、多言語化などの成長にあわせて、その時々で最適な形を考えていこうと思っています。

現在アトピヨのように、アトピーの方が継続的に利用し、その結果、アトピーの時系列の画像データを集め続けられるシステム・仕組みは世の中にほとんどありません。まだ始めたばかりですが、アトピヨには色々な可能性があると感じており、自分自身のめりこんでいます。


Ryotaro Ako

元アトピー。3児のパパ。エンジニア。公認会計士。

アトピー(幼少期に完治)、喘息、鼻炎という3つのアレルギー疾患の経験から

、患者会でボランティア活動に従事。薬剤師である妻の見解、

プログラマーの協力・監修を受け、自ら本アプリを開発。

・第3回健康医療ベンチャー大賞 3位入賞&プラメド賞(主催:慶應医学部、後援:厚労省など)

・Healthcare Venture Knot 2019 優秀賞

・TechAcademy Contest 2018 Summer 最優秀賞

・第13回キッズデザイン賞 受賞(主催:キッズデザイン協議会、後援:内閣府など)


【アプリ詳細】

アプリ名:アトピー見える化アプリ-アトピヨ

配信日:2018年7月25日

カテゴリ・年齢制限:メディカル・17歳以上

最新バージョン:1.3.0

対応機種:iOS11.0以上

利用料金:無料 ※アプリ内広告なし

開発元:Ryotaro Ako

 





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